乾癬
乾癬
皮膚が赤く盛り上がり、表面が白っぽいかさぶたで覆われ、そのかさぶたがぽろぽろとはがれ落ちる病気です。
赤くなる原因は、炎症を起こす細胞が集まって様々な炎症を起こす物質を出しているため、毛細血管が拡張し、皮膚が赤みを帯びた状態になります。また皮膚の細胞が、正常な皮膚と比べて10倍以上の速度で生まれ変わり、増殖が過剰な状態となるため、古い皮膚の細胞が角化して盛り上がり白っぽいかさぶた=鱗屑(りんせつ)となってはがれ落ちていきます。
頭皮や髪の生え際、ひじ、ひざなど比較的外からの刺激を受けやすいところに出やすく、国内では、おおよそ300人に1人程度の割合で乳幼児から高齢者まで幅広い年齢層で発症します。男女比は約2対1で男性に多い傾向があります。
尋常性乾癬は全国で約38万人1),2)、人口の約0.1%
1) Kubota K et al. BMJ Open. 2015;5(1):e006450
2) Takahashi H et al. J Dermatol. 2011;38(12):1125-129
乾癬は5つの種類に分類されます。
全体の70~80%を占め、一般に乾癬といえば尋常性乾癬のことをいいます。乾癬では症状が出ていない皮膚に引っ掻くなどの刺激を与えると、その刺激をきっかけに新たな発疹が現れることがあります。
関節が腫れたようになり、手や足の指の第一関節に多く発症します。乾癬によって関節に炎症が起こった状態を乾癬性関節炎と言い、早期に発見し、少しでも早く治療を開始することが重要とされています。
比較的若い人に多く、水滴ぐらいの大きさの小型の皮疹が発症します。風邪などの感染症がきっかけで起こることがあり、特に扁桃腺炎(へんとうせんえん)が原因となることが多いといわれています。
尋常性乾癬の皮疹が全身に広がり、皮膚全体の80%以上が赤くなった状態をいいます。発熱や悪寒、倦怠感などを伴います。紅皮症の原因は皮膚炎、感染症、薬剤などいくつかあります。
発熱・悪寒・全身倦怠感を伴い急激に全身の皮膚が赤くなり、膿を持った水疱が多数発症します。急な発熱とともに全身に発赤と膿疱が現れる汎発性膿疱性乾癬(はんぱつせいのうほうせいかんせん)の発症頻度はまれですが、重症疾患でほとんどの患者さんは入院治療が必要です。汎発性膿疱性乾癬は厚生労働省の希少難治性疾患(指定難病)に指定されており、認定基準を満たすと医療費助成が受けられます。
乾癬の原因としては、遺伝・外的・内的の三つの要因が関わっています。 乾癬になりやすい体質があり、そこに感染症や精神的ストレス、薬剤などのさまざまな要因が加わって発症すると考えられています。また肥満による脂肪細胞は炎症反応を促す物質を作り出すため乾癬を悪化させる可能性があります。 このように様々な原因によって、免疫機能に異常が生じて、乾癬の発症や症状の変化が引き起こされると考えられています。 乾癬は感染する病気ではなく、発疹に触れても、温泉やプールに一緒に入っても、他の人にうつることはありません。
ステロイド外用薬は乾癬治療の主に使用される塗り薬です。薬によって強さが異なりますので、皮膚炎の重症度や塗布する部位に応じて適切なステロイド外用薬を選択します。 ステロイドはホルモンの一種で、人のからだの中の副腎という臓器で作られています。このステロイドホルモンを投与すると細胞の中に入り、核内の遺伝子に直接作用します。その効果は高く持続時間も長いので、様々な病気の治療に用いられており、多大な効果を発揮します。
患者様から「ステロイドは怖い」や、「体によくないのでは?」といった声を聞くことがあります。ステロイド外用剤を長期にわたって連用した場合や、皮膚が薄くデリケートな部位に強いステロイドを使用し続けることによって、塗ったところに局所性の副作用が出ることがあるためかと思います。これを局所的副作用と言い、下記のようなものがあります。
これらの副作用のほとんどは一過性であり、正しい治療をすれば治るものです。ステロイド剤は正しく使えば安全で良い薬です。外用剤を塗る部位とその種類、塗り方、塗る量、塗る期間などを守り使用することが大切です。 当院では患者様の状態に応じて適切な外用剤を選択しております。
ステロイド外用剤で、皮膚の炎症をおさえる働きにより、頭皮の赤み、はれ、かゆみなどの症状を改善します。1日1回、洗髪の約15分前にコムクロシャンプーを患部に塗布し、洗髪時に泡立ててから洗い流します。
対象年齢:13才以上
ドボベット®は、活性型ビタミンD3誘導体であるカルシポトリオール水和物と、副腎皮質ステロイドであるベタメタゾンジプロピオン酸エステルを組み合わせた配合外用剤(塗り薬)です。活性型ビタミンD3誘導体は主に表皮細胞に働き、ケラチノサイトの過剰増殖や異常な分化を抑制します。一方、副腎皮質ステロイドは、主に炎症反応を促すサイトカインなどの分泌を抑制し、炎症を抑える役割を担っています。効果が出てくるまで時間がかかりますが、一度改善すると再発しにくいこと、長期間塗っても副作用が出にくい特徴があります。皮膚の委縮などステロイド特有の副作用をカバーしてくれる効果もあります。
対象年齢:16才以上
活性型ビタミンD3誘導体(マキサカルシトール)とステロイド(ベタメタゾン酪酸エステルプロピオン酸エステル)を組み合わせた配合外用剤(塗り薬)です。活性型ビタミンD3誘導体は、表皮角化細胞の増殖を抑制し、表皮肥厚を改善する作用があります。ステロイドは、皮膚の炎症をおさえる働きがあり、赤み、はれ、かゆみなどの症状を改善します。効果が出てくるまで時間がかかりますが、一度改善すると再発しにくいこと、長期間塗っても副作用が出にくい特徴があります。
対象年齢:対象年齢:16才以上
乾癬に対してビタミンD3外用薬は、皮膚の細胞が過剰に形成されるのを抑制し、皮膚の新陳代謝を調整し正常な皮膚の再形成を促す効果があります。乾癬のように皮膚の細胞が過剰に作られて、表皮が盛り上がり鱗屑ができ、それがフケのようにポロポロと剥がれ落ちる症状に効果的です。
活性型ビタミンD3誘導体で、乾癬によるかさぶた、赤み、発疹などの症状を改善し、表皮の角化細胞が増殖するのをおさえ、正常な皮膚に戻していく働きがあります。
オキサロール®(ブロダルマブ)はステロイドを含まずビタミンD3のみを主成分とする外用剤(塗り薬)です。活性型ビタミンD3製剤はステロイド軟膏に伴う副作用がなく、顔面など長期にステロイド軟膏が使いにくい場所でも使用することができます。ステロイド外用薬と比較すると効果が現れるまでに時間がかかりますが、副作用が少ないとされていて、良好な状態を継続することも可能だと言われています。
対象年齢:20歳以上75歳以下
ソーティクツ®(デュークラバシチニブ)は、チロシンキナーゼ2(TYK2)という酵素を阻害することで、炎症にかかわっている複数の物質に作用して、免疫をつかさどる細胞の働きを抑えることにより、乾癬の症状を改善します。
炎症性サイトカインであるIL-12、IL-23、IFN-α等が炎症を引き起こす時に、それらが受容体に結合して刺激が核に伝えられます。受容体にはTYK2(チロシンキナーゼ2)と呼ばれるタンパク質が付随していて、TYK2を介してシグナルが核へと届けられます。核内に刺激が到達すると、炎症反応が引き起こされ、乾癬の発症や症状進行が促進されると考えられています。特にTYK2は、乾癬の原因となるIL-12、IL-23、IFN-αが結合するため、乾癬の病態と深く関与しています。ソーティクツ®は、TYK2を選択的に阻害する薬剤です。TYK2を阻害することで、IL-12、IL-23、IFN-αによる刺激が核に伝わるのを遮断して炎症を抑え、乾癬の進行を抑制すると考えられています。
紫外線療法やその他の内服治療では十分に効果が得られない成人の尋常性乾癬・膿疱性乾癬・乾癬性紅皮症の方が対象になります。
対象年齢:15才以上
オテズラ®(アプレミラスト)は、PDE4を阻害することで、炎症にかかわっている複数の物質に作用して、免疫をつかさどる細胞の働きを抑えることにより、乾癬の症状を改善します。
PDE4を阻害することにより、細胞内cAMP濃度を上昇させ、TNF-α、IL-17、IL-23等の炎症性サイトカインを制御し、IL-10等の抗炎症性サイトカインを増加させ、炎症反応を制御する効果があります。
紫外線療法やその他の内服治療では十分に効果が得られない成人の尋常性乾癬・膿疱性乾癬・乾癬性紅皮症の方が対象になります。
対象年齢:16歳以上
ネオーラル®(シクロスポリン)は、自己免疫抑制剤に分類される飲み薬です。
サイトカインの発生を低下させ、免疫抑制に働く特徴があり、内服後に比較的早くかゆみがおさまります。塗り薬や抗ヒスタミン剤を使用しても改善しなかったかゆみがおさまることによって、患者様がよく眠れるようになる等、生活の質が向上することにつながります。
他の治療では十分な効果が得られない症状が重い方が対象になり、顔面の難治性紅斑や紅皮症などにも有効です。皮疹やかゆみの症状が改善したら、長期的に使用することはすすめられていないため、これまでの治療に戻すことが大切です。
対象年齢:16歳以上
リウマトレックス®(メトトレキサート/MTX)は、免疫機能をつかさどっているリンパ球や炎症に関係している細胞の働きを抑え、異常な状態となっている免疫反応を抑えることで、乾癬性関節炎の症状を改善します。
乾癬性関節炎は、免疫の異常により全身に炎症がおこり、その結果、 日常生活が不自由になり、寿命にも影響を及ぼす病気です。
対象年齢:15歳以上
チガソン®(エトレチナート)は、ビタミンAの類似物質で皮膚の異常に固くなった部分(角化)をはがしやすくし、正常な表皮や粘膜を再形成することにより、乾癬の症状を改善します。
注意点として、妊娠する可能性がある女性の場合は、投与中もしくは投与中止後少なくても2年間の避妊が必要になります。また、男性においても投与中もしくは投与中止後少なくとも6ヶ月の避妊が必要になります。
対象年齢:15歳以上
トルツ®は、乾癬性関節炎の治療薬(生物学的製剤)です。乾癬性関節炎による「関節症状」と「皮膚症状」の両方に効果が期待できます。乾癬に深く関与するIL-17Aを選択的に標的にした薬剤で、過剰に増えたIL-17Aとしっかり結合して働きを弱め、炎症や悪化につながる働きを抑えます。これにより乾癬による皮膚症状や関節症状の改善に効果が期待できます。
乾癬性関節炎の関節症状だけでなく皮膚症状にも、「IL-17A」の過剰な増加が深く関与しています。トルツ®は、「IL-17A」と選択的に結合し 、その働きを弱めることにより、「関節症状」と「皮膚症状」の両方への効果が期待できます。
最近の研究により、乾癬性関節炎による関節症状や皮膚症状の原因として、「IL-17A」(インターロイキン17A)という免疫にかかわるサイトカイン*が深く関与していることがわかりました※。
*サイトカイン︓細胞から細胞へ情報を伝達する物質で、本来は体を正常に機能させるために必要なタンパク質です。
何らかの原因で過剰に増えてしまうと、炎症やアレルギー症状などを引き起こします。
※Lynde CW et al.: J Am Acad Dermatol. 71(1), 141-150(2014)McGonagle DG et al.: Ann Rheum Dis. 78(9), 1167-1178(2019)
以下に該当する患者様は主治医にご相談ください。
どの方でも、トルツ®が投与できる訳ではありません。
医師による診察と検査が必要になります。
現在の症状、今までの治療方法、ご本人の希望(治療期間・費用)などを伺い、治療方針についてお話をさせていただきます。
その後、トルツ®について看護師から詳しくご説明させていただきます。説明を受け、トルツ®をやっていくのか検討いただいても問題ありません。
後日、診察にご来院いただき、トルツ®希望であれば、お薬の処方をします。
薬局で薬をもらった後、再度クリニックに戻っていただき、注射の説明と実施をします。
※当院では通院注射を行っておりません。初回投与の指導後はご自宅にてご自身で注射を継続していただきます。
すでに他院で導入済みの方(自己注射済)には、ご状況などをお伺いし、医師の診断にて問題がないようであれば、初診時でもトルツ®の処方が可能です。紹介状などをお持ちいただくとスムーズです。
※自己判断で治療間隔を調整したり、中断再開すると薬が効かなくなってしまう可能性があります。
スケジュール通り投与していただき、治療終了時期に関しては必ず医師にご相談ください。
注)ここで紹介している薬剤費の自己負担額の計算は1つの例です。
実際には、年齢や収入、投与スケジュール等によって異なります。詳しくは、病院の医事課などにご確認ください。
トルツ®は、成人の方および15歳以上の小児が対象となります。
3割 | 6歳以上69歳以下、70歳以上で現役並み所得者 |
---|---|
2割 | 70以上74歳以下で一般・低所得者 |
1割 | 75歳以上で一般・低所得者(令和4年10月1日から、一部の方は2割負担になります) |
トルツ®説明サイトよりご確認ください。
トルツ®のリーフレット資料になります。下記よりご確認ください。
コセンティクス®は乾癬の症状を起こすIL-17Aのはたらきを抑え、皮膚症状や関節症状の改善をめざすために使用する生物学的製剤の一つです。
コセンティクス®は、このIL-17Aのはたらきを弱め、これまでさまざまな治療を受けても、満足できる改善がみられなかった尋常性乾癬(じんじょうせいかんせん)、乾癬性関節炎(かんせんせいかんせつえん)、膿疱性乾癬(のうほうせいかんせん)などの皮膚症状と関節症状を改善するためのお薬です。
IL-17Aの作用が抑制されることで、炎症を抑え、乾癬や強直性脊椎炎の症状が改善すると考えられます。
以下に該当する患者様は主治医にご相談ください。
どの方でも、コセンティクス®が投与できる訳ではありません。
医師による診察と検査が必要になります。
現在の症状、今までの治療方法、ご本人の希望(治療期間・費用)などを伺い、治療方針についてお話をさせていただきます。
その後、コセンティクス®について看護師から詳しくご説明させていただきます。説明を受け、コセンティクス®をやっていくのか検討いただいても問題ありません。
後日、診察にご来院いただき、コセンティクス®希望であれば、お薬の処方をします。
薬局で薬をもらった後、再度クリニックに戻っていただき、注射の説明と実施をします。
※当院では通院注射を行っておりません。初回投与の指導後はご自宅にてご自身で注射を継続していただきます。
すでに他院で導入済みの方(自己注射済)には、ご状況などをお伺いし、医師の診断にて問題がないようであれば、初診時でもコセンティクス®の処方が可能です。紹介状などをお持ちいただくとスムーズです。
※自己判断で治療間隔を調整したり、中断再開すると薬が効かなくなってしまう可能性があります。
スケジュール通り投与していただき、治療終了時期に関しては必ず医師にご相談ください。
コセンティクス®は、成人の方および6歳以上の小児が対象となります。
3割 | 6歳以上69歳以下、70歳以上で現役並み所得者 |
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2割 | 70以上74歳以下で一般・低所得者 |
1割 | 75歳以上で一般・低所得者(令和4年10月1日から、一部の方は2割負担になります) |
コセンティクス®説明サイトよりご確認ください。
お電話はこちら |
0120-003-293(通話料無料) ノバルティスダイレクト |
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医療費制度へのご質問 | お電話受付時間 月~金 9:00~17:30(祝日及び弊社休日を除く) |
コセンティクス®のリーフレット資料になります。下記よりご確認ください。
ルミセフ®(ブロダルマブ)は、炎症性サイトカインであるIL-17Aの受容体Aに特異的に結合するヒトIgG2モノクローナル抗体で、IL17の受容体であるIL-17RAをブロックし、IL-17A, IL-17A/F, IL-17C, IL-17E, IL-17Fによるシグナル伝達を阻害する抗体薬です。炎症を抑え、乾癬の症状が改善する効果があります。
IL-17A受容体Aに対する抗体としては世界初の薬剤で、国内および海外臨床試験にて有効性および安全性が確認されています。
対象年齢:15歳以上
高額な医療費を支払った時は、高額療養費で払い戻しが受けられます。高額療養費とは、1ヵ月の間(1日から月末まで)にかかった医療費の自己負担額が高額になった場合、一定の金額(自己負担限度額*)を超えた分が、あとで払い戻される制度です。
*自己負担限度額:年齢および所得状況等により設定されている額
• 世帯合算
自己負担額は世帯で合算できます。世帯で複数の方が同じ月に病気やけがをして医療機関で受診した場合や、一人が複数の医療機関で受診したり、一つの医療機関で入院と外来で受診した場合は、自己負担額は世帯で合算することができ、その合算した額が自己負担限度額を超えた場合は、超えた額が払い戻されます。
• 多数回該当制度の仕組み
継続して高額な医療を受ける必要のある方には、自己負担上限額がさらに引き下げられる制度があります。直近12ヵ月以内に3回以上高額療養費制度の適用を受けた場合を多数回該当と言い、4回目以降の月の自己負担の上限額がさらに引き下げられます。
• 付加給付制度(健康保険組合等の独自制度)
高額療養費制度は国が定める制度ですが、ご加入の医療保険(保険者)によっては、独自の「付加給付」として、国が定めるよりも手厚い医療費助成を行っており、自己負担上限額がさらに低く設定されている場合があります。すべての保険者で実施されているわけではありませんので、詳しくはご加入の保険者(健康保険組合等)にご確認ください。お問い合わせ先:健康保険証に記載されている保険者(健康保険組合等)
• 申請方法
高額療養費の払い戻しを受けるには、下記の申請方法があります。
生計を一にする家族が1年間で支払った医療費の総額が10万円を超えると、医療費控除を受けることによって、所得状況に応じた還付金を受け取ることができます。医療費控除を受けるためには、確定申告が必要です。医療機関から発行された領収書は必ず保管しておいてください。